ゴムの試作を極める
開発期間・納期にも厳しい制限があり、性能に加えスピードが求められる近年。
「試作待ち」で長期間止まってしまっては、
せっかくのグッドデザインや良案も、
まさに絵に描いたモチになり半月以上もペンディング。
ゴムの試作の舞台裏について、金型メーカーの現場で修行した観点からSawaseがお答えします!
ゴムの試作を極める 目次
①金型メーカーの動き
②ゴム材料の調達
③成型メーカーの対応
B なぜ選ばれる? RIKENの試作
①試作スピード
②豊富な材料在庫
③専任スタッフ常駐
④圧倒的低価格
⑤高いモチベーション
なぜゴムの試作に時間がかかる?
ウェブサイトなどのアピールでは「短納期」をうたいますが、現実には多くの場合ゴムの試作には時間がかかっているようです。
理由はいくつかありますので、整理していきましょう。
A. メインカスタマー(大口取引先)の優先
金型業界ではその性質上、多くの場合売上の7-8割以上を占めるメインカスタマーに依存しています。昭和・平成の時代から長く関係を築き、その関係が強固であることも多いでしょう。
金型メーカーが試作型製作を受ける場合、メインカスタマーの仕事の生産能力の一部を試作に回す必要があります。マシニングセンタなどの機械が動いている場合、試作の希望納期によっては機械を止める必要があります。
B. 工程上の問題
試作を行う場合、金型メーカーの仕事のフローは以下のようになります。
【デザイン】1. 図面確認 2. 構想立案
↓
【データ作成】3. CADデータ作成 4. CAMデータ作成
↓
【機械加工】5. マシニングセンタ等での加工 6. シボ・ブラスト等表面処理・研磨
↓
【組立・確認】7. ノックピン・ブッシュ等の合わせと組立 8. 形状確認用試作
↓
【配送】9. 配送
ざっとこのようになり、各工程でさらに細分化されます。
CADやCAMができる技術者の人手、マシニングセンタ・放電加工・旋盤などの機械、この2つを数日の間確保しなければなりませんので、どうしても取り組みに慎重になるのかもしれません。
C. コストと利幅
200mm角の小さな試作型とはいえ、量産型と同様のフローで作業を行います。試作は現場の目が慣れていない形状であることも多く、経験の少ない加工を進めるなかで「刃物が割れる」「寸法が外れる」等のリスクを抱えることにもなります。
量産型=【取数=多、単価=高、利益=高】
試作型=【取数=少、単価=安、利益=低】
という図式で、多少利益率を上げても量産型から見れば小さくなってしまうのです。
以上、主にA-Cの理由から、試作に積極的でない金型メーカーも多いことでしょう。
金型はものづくりの原点、あらゆる量産品は金型から生まれます。それゆえに試作だからといって労を惜しむわけにはいきません。コスト・品質・納期・キャパシティ・優先順位等様々な要因に挟まれ、ゴム金型の試作は金型メーカーの悩みどころでもあるのです。
【この金型屋さんがスゴイ!】
平岡タイランド Hiraoka(Thailand)Co.,Ltd.
バンコク市内から北東に350km、コラート・スラナリ工業団地で休みなく稼働している。最新型マシニングセンタ4台、放電加工機3台をはじめとする加工設備と、大手ゴムメーカーと半世紀以上に渡る強固なつながりを持つ独自の技術力で、複雑な形状や厳しい寸法公差を実現していく。工業用ゴム製品のみならず、医療・食品・化粧品容器等様々な分野で活躍している。
コラム:動きが遅いなら自社で作ればいいのでは
金型メーカーに頼ると大変。じゃあ自社で金型を作れば解決では?
ところが、そう簡単にはいきません。「餅は餅屋」なのです。
「金型の作成に必要なもの」とは?(あくまで個人の主観です)
1. 設備
マシニングセンタ、NC旋盤、放電加工機、ワイヤーカット機、研磨機、ブラストマシン、グラインダー等、様々な専用設備が必要です。これを揃えるためにはかなりの初期投資が必要となります。
2. 工具・備品類
目立たないことですが、ナットやボルト、ブッシュ、ピン、ドリル、切削工具等様々な小型ツールを揃える必要があります。これらが常備できるのは、常に金型を作り続けている場所だからこそ。また特注刃物も摩耗や折れを想定し複数購入する必要があります。これも常に金型を作り続けているからこそかけられるコストなのです。
3. ノウハウ
金型メーカー内ではちょくちょく部品の「ペケ※」を出します。
※修正の利かないミス、新たに作り替えが必要
当然外部には言いませんが、わりとあります。自身の経験では、以下のようなものがあります。
【旋盤でスプルーを作ろう】
削る⇒寸法確認⇒ん?削りすぎたか?⇒落ち着く⇒寸法確認⇒削り過ぎた⇒工場長に報告⇒ポイッと捨てられる
【ラジアルでφ100の穴を空けよう】
スーパードリルで穴あけ⇒送りをかけて後ろのラジアル⇒スーパードリル、材料に負けまさかの湾曲⇒工場長に報告⇒鋼材100㎏すべてペケ
金型メーカーは長い歴史を様々なペケとともに歩んでいます。その失敗と成功の積み重ねが未来へとつながる独自のノウハウになっているのです。
4. 人
設備も備品もノウハウも、使いこなすのは結局人です。金型メーカーでは通常すべての機械を扱えるよう訓練され、そのうえで一つの分野の専業となります。
職人気質の先輩が厳しく教えて下さるのですが、飲み込みが早い人でも機械に慣れるには1年はかかるでしょうか。
結論:ほぼ無理
ゴムメーカーが金型製作の技術を担保するのは相当難しいように思います。
極めて簡単な形状であったり、部分的なメンテナンスであればできるかもしれませんが、常に金型を作り続けているアドバンテージには到底及びません。
大手のゴムメーカーでも提携し懇意にしている金型メーカーがあり、外注しています。
金型に続いて重要なのが、ゴムの生材料です。
図面にはMaterial: 〇〇〇 Hs: 〇〇±〇〇等、グレード・硬度の指定があります。
せっかく金型が早く完成しても、ゴム材料がなければ製品ができません。スピーディにお客様のお手元に届けるには、これらを常備しているか迅速に手配する必要があります。
A ゴムのブランド・銘柄
生ゴムのポリマーには複数のメーカーがあり、製品用途に応じて様々なグレードを販売しています。
(例えばシリコーンゴムの場合、信越化学社、Wacker社、東レ・ダウコーニング社、モメンティブ社等が有名です。)
指定の材料がない場合、メーカーや商社を通して調達しなければなりませんが、材料によっては時間がかかることがあり、また最低発注ロットが数十kgである等、融通が利きにくい場合もあります。(試作で必要なのは1-2kg程度)
B ゴムの硬度
図面に硬度指定があるため、ゴムのブランドだけでなくそれに応じた硬度の材料を調達する必要があります。
さらに、硬度には±5(または3)の公差があり、試作の場合はその上下限も併せて作り、比較することがあります。
この5度刻みの材料はメーカーにはないので、特注で練り直す必要があります。
例)図面硬度50±5度の場合、45度、50度、55度の3種類のゴム材料を確保
45度⇒40度と50度を配合
50度⇒グレード品
55度⇒50度と60度を配合
A. メインカスタマーの優先
売上の大部分を占めるメインカスタマーがいる場合、量産品を納期内にさばくことが仕事の優先順位第一位となります。
試作はたいてい予想外の日にちに急ぎで入って来ますので、工場が短納期に対応できる状態であれば問題ありませんが、人件費削減等の事情から余力がない工場もあります。
B 試作専用設備の有無、空き状況
試作型の取数は1ヶ取が多く、金型自体の大きさも200mm×200mm程度となります。近年ゴム業界では「400tや600t等の大型のプレスで、大量の取数」といった風潮があり、小さなプレス機が便利な試作と逆行しています。
小さめのプレスがない場合もしくは空いていない場合は、量産用の成型設備の一番小さな成型機でトライすることになりますが、それでは量産が止まってしまい困ります。
C. コストと利幅
過去に経験のあるような形状や材料であれば成型は問題ないのですが、試作ではゴムメーカーでも未経験の場合があり、その場合は構造考案の手間と不良のリスクを抱えます。それを限られた時間内に納める必要があるため、案外大変です。
利幅については(割合からすれば)ある程度リスク分を利益として乗せることができそうですが、量産型に比べればケタが違いますので、それほど大きくはありません。
このあたりの損得勘定もあり、お断り見積りになってしまうこともあるようです。
かなり長くなりましたが、ゴム部品の試作に関係するそれぞれの立場と事情が明確になったかと思います。
RIKENでは上記すべての問題点を克服しています。
以下、RIKENが選ばれる5つの理由について説明します。
① RIKENの金型完成までのスピードはハッキリ言って異常です。受け取っている私たちもビックリするような短納期で上がってきます。
タイ国内にある日系金型メーカー、およびタイローカルメーカーと極めて強固なパートナーシップを持っていること、お客様・弊社・金型メーカーとがお互いを理解しあいつつ同じ方向を向いて全速力で走っていること、この同体歩行こそが私たちの特色です。
届けます あなたのお手元 1週間
② 頻繁に試作をしており、様々なグレード・硬度の材料を常に保有しています。
Hs25.30.35.40.45.50.55.60.65.70.75.80と、5度刻みで上下限用の材料も網羅しています。
メインとしては信越シリコーン社の汎用グレードを使用しており、他様々なメーカー様のものを常時保有しています。弊社にない材料もすぐに調達が可能です。
金型同様、材料商社様との良好な関係により、迅速な手配が可能になっております。
また自社でポリマーから架橋剤を練り込むことも可能で、すぐに材料を準備できます。
通常の加硫剤では実現できないもの、例えば臭気対策品や黄変対策品等もこちらで対応することができます。
③ 試作のご依頼をいただきますと、お客様との詳細打合せから発送まで、すべてのスケジュールを分単位で決定します。金型が到着し次第プレス成型ができるように設備も人も準備します。
また今では珍しい37t手動プレスを保有しており、試作のような小回りが必要な作業にピッタリ!
④ 試作費の請求書ですが、試作型製作費、FEDEX航空便費用(1,000THB程度)、タイでの一般スタッフの人件費のみいただいております。
試作はお客様の為にあるべきで、価格交渉や駆け引きで時間を浪費することなく進められるよう価格を設定しています。
⑤ 何と言っても、決め手は「試作愛」でしょう。ものづくりをする人間にとって、未だ世に出ていない新たな形状のものや新発想の部品に触れるのは喜ばしいことです。お客様が知恵を絞って考え抜いて描いた図面、それを受け取り金型に反映し実現させてもらえるということは、金額では表せない喜びがあるのです。
試作とともに生き、試作とともに成長する。
RIKENが試作で選ばれる理由、それは好奇心と試作愛。
今週もRIKENは喜んで試作にチャレンジしています。
シリコンゴムの試作、量産のご相談
Mr. Sawase
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このページを書いた人
RIKENTECHNOLOGY(THAILAND)CO.,LTD.
General Manager Mr. Sawase
HPの品質改善に頭を悩ませる中間管理職。